今回は統計力学の教科書のオススメを上げていこうと思います.統計力学は「量子力学」と相互しあっている分野で,「多体系の量子力学」や「物性論」,「素粒子論」の基礎となる分野です.物理学を学ぶ上で必須となるのでしっかりと理解する必要があります.情報が多いので,全てを丸暗記するのではなく,一度理解し概念を把握しておいて本を適宜参考にできるようにしておきましょう.熱力学一通りと初歩的な量子力学を勉強した人向けです.
入門編
芦田正巳「統計力学を学ぶ人のために」
入門には「芦田正巳:統計力学を学ぶ人のために」がおすすめです.多体系のお話から始まり,統計力学を記述する確率の基礎を詳しく丁寧に解説してくれています.数式展開も丁寧で,得られた結果をどのようにして吟味するかを丁寧に教えてくれます.勉強し始めの人が疑問に思いそうな基本的な部分を先回りして解説されている親切な本です.
統計力学(講談社基礎物理学シリーズ)
「北原和夫・杉山忠夫:統計力学」も入門によいと思います.2010年に出版された新しい本なのでレイアウトがきれいです.計算も程々に丁寧です.
初級編
長岡洋介「統計力学(岩波基礎物理シリーズ 7)」
「長岡洋介:統計力学(岩波基礎物理シリーズ)」もおすすめです.私は基本的に統計力学は熱力学と分離して学ぶべきだと考えています.伝統的な形式で書かれているので他の本を読む上での基礎力が身につきます.芦田先生の本ではあまり触れられていない相転移やイジングモデルなどの応用も載っており,統計力学をどのようにして利用するかのイメージを身につけることができると思います.
阿部龍蔵「熱統計力学」
「阿部龍蔵:熱統計力学」です.阿部龍蔵先生の本は構成が綺麗で,読んでいて冗長さを感じることがありません.最初に熱力学のシンプルな復習があり,分子運動論,古典統計力学,理想フェルミ・ボース気体へと繋がります.251ページ程度の本ですが要所要所で入門書よりも進んだ内容に触れているので読み切ると少し賢くなった気がします.演習問題は全て解きましょう.
中級編
田崎晴明「統計力学(新物理学シリーズ)」
「田崎晴明:統計力学I,II」を読んで今までごまかしていた部分をしっかりと考え直します.二巻に分かれていますが内容で分けられているのではなく単にページ数が多いのが理由なので(多分)両方読んで一冊だと考えましょう.統計力学をある程度勉強していると,疑問に思うところがあっても取り敢えず計算を進めて結果を出してよしとしてしまいがちなのでここでもう一度考え直すと良いと思います.この本は日本語での解説が多く,丁寧にかかれているので基礎力がついていればおもったよりもスムーズに読むことができると思います.裏を返せば,式を追うのが辛いと感じるなら計算力が足りていないと考えたほうがよいです.ところで培風館の本はハードカバーの割に直ぐに壊れるのはどうにかならないのだろうか.
上級編
久保亮五「大学演習 熱学・統計力学」
「久保亮五:大学演習 熱学・統計力学」はこの分野の王道とも言える演習書です.最初の例題で面食らったのは私だけではないはずです.前半が熱力学,後半が統計力学となっています.基本的に簡単な問題はないものと思ったほうがよいです.試験対策で使う類の本ではなく,日頃の勉強でコツコツと解きながら,わからないところはチェックして飛ばし飛ばし進めていく本です.A,B,Cと問題のランクが分けられていて,A問題を先に解いて,後からB,C問題へと進めていくと良いと思います(序にも時間がない人にこのように勧められています).A問題だけでも十分多く,私もA問題の8割程度しか触れていません.
最後に
統計力学は量子力学を用いて構成されるので量子力学の計算ができることが前提にあります.計算も大変なのでとにかく手を動かして自分で結果を確認することが大事です.煩雑な計算が多く,大変ですが,一度その計算を経験しておくとより高度な物理を勉強する際にも必ず役に立ちます.教科書レベルの計算なら大部分は手計算でフォローできるはずなのでWolfram Alphaに頼らずに自分で解くのが良いです.